SCIM(スキム)
SCIM(スキム)とは、「System for Cross-domain Identity Management(クロスドメイン アイデンティティ管理システム)」の略で、異なるシステムやクラウドサービス間で、ユーザーのID(アカウント)情報を自動的に同期・管理するためのオープンな標準規格(プロトコル)のことです。
例えるなら、会社の人事部で新入社員の情報を登録したら、自動的にその情報が「メールシステム」「グループウェア」「勤怠システム」「経費精算システム」など、すべての関連システムに反映され、アカウントが作成されたり、権限が設定されたりする「自動人事連携システム」のようなものです。
SCIMが解決する課題
企業が多くのクラウドサービス(SaaS)を利用するようになるにつれて、以下のような課題が生じました。
- 手動でのアカウント管理の負担: 新入社員の入社、部署異動、退職などのたびに、IT管理者が各クラウドサービスに個別にログインしてアカウントを作成・更新・削除する手間が膨大になる。
- アカウント情報の不整合: 手動操作による入力ミスや、更新忘れによって、システム間でユーザー情報にずれが生じる。
- セキュリティリスク: 退職者のアカウントが速やかに無効化されないために、不正アクセスのリスクが生じる。
SCIMは、これらの課題を解決し、ID管理の効率化とセキュリティ強化を目的として開発されました。
SCIMの主な機能とメリット
SCIMは、主に以下のような「プロビジョニング」の自動化を実現します。
- ユーザーアカウントの自動作成・更新・削除(プロビジョニング):
- 人事システムやIdP(Identity Provider:認証情報を一元管理するシステム。例:Okta、Azure AD、あるいはGoogle Workspace自体)でユーザー情報を変更すると、その変更がSCIMを通じて他のSaaSアプリケーションに自動的に反映されます。
- 新入社員のアカウント作成、部署異動に伴う権限の変更、退職者のアカウント無効化などを自動化できます。
- グループ情報の同期:
- ユーザーだけでなく、グループ情報(例:部署ごとのグループ)も同期できるため、グループに対するアクセス権限の管理も自動化・簡素化されます。
- 属性情報の同期:
- ユーザーの氏名、メールアドレス、電話番号、役職などの属性情報も、システム間で常に最新の状態に保たれます。
SCIMのメリット
- 管理者の負担軽減: 手動で行っていたアカウント管理業務が大幅に削減され、IT部門の運用効率が向上します。
- セキュリティの強化: 退職者のアカウントが迅速に無効化されるため、「ゾンビアカウント」(退職後も有効なアカウント)による不正アクセスのリスクが最小限に抑えられます。
- データの正確性と一貫性: 常に最新のユーザー情報がシステム間で同期されるため、データの不整合によるエラーや問題が減少します。
- 生産性の向上: 新入社員は入社後すぐに必要なシステムにアクセスできるようになり、業務開始までの時間が短縮されます。
- 標準化された連携: ベンダーごとに異なるカスタム連携を開発する手間が省け、多くのSaaSアプリケーションとの連携が容易になります。
Google Workspaceは、SCIMに対応しており、他のSaaSアプリケーション(例:Salesforce、Workday、Dropboxなど)やオンプレミスのID管理システムと連携して、ユーザーアカウントのプロビジョニングを自動化することが可能です。これにより、企業はより安全で効率的なID管理を実現できます。