Vault(ボルト)
Vault(ボルト)とは、Google Workspaceにおいて、「Google Vault(グーグル ボルト)」を指します。これは、企業や組織が利用するGoogle Workspaceのデータ(Gmailのメール、Google Chatのチャット履歴、Googleドライブのファイル、Google Meetの録画など)を、法律や企業ポリシーに基づいて長期的に保持・アーカイブし、必要に応じて検索・開示(eDiscovery)するためのサービスです。
例えるなら、会社の大切な書類やデジタル記録を、法律で定められた期間や、将来の監査・訴訟に備えて、絶対に失われたり改ざんされたりしないように厳重に保管しておく「デジタル金庫」のようなものです。
Vaultの主な機能とメリット
Google Vaultは、主に以下の3つの機能を提供します。
- データ保持(Retention):
- 企業内の特定のデータ(例:全てのGmail、特定の部署のGoogleドライブファイルなど)について、自動的に保持期間を設定し、その期間内はたとえユーザーが削除したり、保管期間が過ぎたりしても、データがGoogle Vaultから削除されないようにします。
- これにより、各国のデータ保持に関する法規制や業界固有のコンプライアンス要件(例:金融、医療)を確実に遵守できます。
- 訴訟ホールド(Legal Hold):
- 訴訟や監査、内部調査などの法的要件が発生した際に、特定のユーザーやデータに対して「訴訟ホールド」を設定できます。
- 訴訟ホールドが設定されたデータは、通常のデータ保持ポリシーやユーザーによる削除に関わらず、ホールドが解除されるまで無期限に保護されます。これは、法的な証拠を保全するために不可欠な機能です。
- 電子情報開示(eDiscovery):
- Google Workspaceに保存された膨大なデータの中から、キーワード、日付、ユーザー、ファイルの種類など、様々な条件を指定して、関連性の高い情報を効率的に検索できます。
- 検索で特定されたデータは、法的に有効な標準形式(例:GmailはMBOX形式)でエクスポートし、外部の弁護士や法務ツールに提供することができます。これにより、訴訟にかかる時間とコストを大幅に削減できます。
Vaultの活用メリット
- コンプライアンスの強化: 法的義務や規制への対応を可能にし、企業の信用失墜や罰則のリスクを回避します。
- リスクマネジメント: 情報漏洩や不正行為が発生した場合に、関連するコミュニケーション履歴やファイル操作履歴を保全・調査し、原因究明や再発防止策の立案に役立てます。
- データ管理の効率化: 必要なデータが確実に保持され、不要なデータは自動的に削除されるため、ストレージ管理が効率化されます。
- 監査性と透明性: Vault内での検索、エクスポート、保持ルールの変更など、管理者によるすべての操作履歴が記録され、プロセス全体の透明性が保証されます。
Google Vaultは、主にGoogle WorkspaceのBusiness PlusまたはEnterpriseエディションで提供されており、現代のデジタル化されたビジネス環境において、企業が法的リスクを管理し、健全な事業運営を維持するために不可欠な機能となっています。