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IaaS (Infrastructure as a Service)
IaaS は、「Infrastructure as a Service」の略で、日本語では「サービスとしてのインフラ」と訳されます。クラウドサービスの一種で、インターネットを通じて、ITシステムの基盤(インフラ)を必要な時に必要なだけ利用できるサービスです。
これは、自分で土地を買って家(ITシステム)を建てるのではなく、すでに建物が建てられる状態に整えられた土地(サーバー、ネットワーク、ストレージなど)を借りて、その上に自由に家を建てるようなイメージです。
IaaSで提供される主なもの
IaaSでは、以下のようなITシステムの土台となる要素がサービスとして提供されます。
- 仮想マシン (VM): サーバーを仮想化したものです。CPU、メモリ、ストレージ、OSなどを自由に選択して、自分だけの仮想サーバーを構築できます。Google Cloud でいうところの Compute Engine がこれにあたります。
- ストレージ: データを保存するための領域です。ファイルの保存場所(オブジェクトストレージ)や、仮想マシンに接続して使うディスク(ブロックストレージ)などがあります。Google Cloud の Cloud Storage や Persistent Disk が該当します。
- ネットワーク: 仮想マシン同士をつなぐネットワークや、外部と接続するための設定、ロードバランサーなどが含まれます。Google Cloud の Virtual Private Cloud (VPC) や Cloud Load Balancing がこれにあたります。
- ファイアウォール: 外部からの不正アクセスを防ぐためのセキュリティ機能です。
IaaSのメリット
- 初期費用の削減: 物理的なサーバーやネットワーク機器を購入する必要がないため、初期投資を大幅に抑えられます。
- 運用・管理の負担軽減: サーバーの設置場所の確保、電源、空調、ハードウェアの故障対応といった物理的な運用・管理は、サービス提供者(クラウドベンダー)が行ってくれます。
- 柔軟なスケーラビリティ: ビジネスの成長やトラフィックの変動に合わせて、必要な時にサーバーの台数を増やしたり(スケールアウト)、スペックを上げたり(スケールアップ)できます。逆に、不要になればリソースを減らすことも簡単です。
- 高可用性・耐障害性: クラウドベンダーは複数のデータセンターと冗長化されたシステムを持っているため、自社で構築するよりも高い可用性と耐障害性を実現しやすいです。
- 迅速なシステム構築: サーバーの準備に時間をかけることなく、すぐに仮想マシンを立ち上げてシステム構築を開始できます。
IaaSのデメリット
- OSやミドルウェアの管理は利用者側: 仮想マシンより上位の層(OS、ミドルウェア、アプリケーション)は、利用者が自分で管理・運用する必要があります。
- ネットワークの知識が必要: 仮想ネットワークの設計や設定には、ある程度のネットワーク知識が求められます。
- コスト管理の複雑さ: 利用量に応じて料金が発生するため、リソースの使いすぎには注意が必要です。コストを最適化するためには、利用状況を把握し、適切なリソースを選択する知識が重要になります。
その他のクラウドサービスとの違い
クラウドサービスには、IaaSの他にPaaS (Platform as a Service) とSaaS (Software as a Service) があります。
- IaaS: サーバーやネットワークなどの**「基盤」**を提供。利用者はその上に自由にOSやアプリケーションを構築・運用。
- PaaS: アプリケーションを開発・実行するための**「プラットフォーム」**を提供。OSやミドルウェアの管理はベンダー任せで、利用者は開発に集中できる。
- 例: Google App Engine, Google Cloud Run, Google Cloud Functions
- 例: Google App Engine, Google Cloud Run, Google Cloud Functions
- SaaS: すでに完成された**「ソフトウェア」**をインターネット経由で提供。利用者はログインするだけで、すぐに機能を利用できる。
- 例: Gmail, Google Drive, Salesforce
- 例: Gmail, Google Drive, Salesforce
IaaSは、これらのクラウドサービスの中で最も自由度が高く、自社の要件に合わせて柔軟にシステムを構築したい場合に適しています。